ブロッター

ブログとツイッターを混ぜて、さらに異論、反論、オブジェクションで固めたものです。で、ブロッターというわけです。毎日書く暇も能力もないので、不定期のコメントです。

2024/秋 comment
ブロッター1  寺田寅彦・・・知っての通り科学者だが、漱石の弟子のような人であり、当然、周囲には菊池寛・芥川龍之介・森鴎外・・・鋭く物を見る作家が取り囲んでいた。日本が不幸な歴史をつくっていくときに、碩学・天才・先見の明をもつ人たちが続出したというのもおもしろいが、やはり国家の教育では作れなかった人材たちということだろう。
 それはたとえば、この震災関連の一文でわかる。関東大震災の話だ。寺田は発生時から見て回って、火災や倒壊の予測・原因を報告していくが、きわめつけはデマを見抜いたことだ。「朝鮮人が井戸に毒物を入れた」という噂を官憲がまき散らしてパニックになる。私の父はそのとき神田から上野に逃げたが、父の話では燃える火事の凄さと井戸掘り職人をしていた祖父に話を伝えることだけだった。ところが寺田は冷静だ。「東京じゅうの井戸の数と位置を把握できるわけがない」「だいたい毒薬の量をどう分散して井戸に運ぶのか」と冷静にデマであると見抜いている。これは地震、津波の対処法も過去の事例を挙げて、助かったところ破壊されつくしたところの例を挙げる。これを読むと、行政も市民も、やってくる天災に何の計画も準備もしないことがわかる。
 近々、大地震と津波は起こるだろう、東南海地震はあと1,2年で起こりそうだ。来年がもう危ない年、また3・11と同じになる。切り抜けられるかな?
ブロッター2  私たちは学校の歴史の勉強で、きちんと近・現代史を習っていない。明治の中期辺りから戦後まで、たとえおざなりにでもやればいいほうで、「受験まで時間がない」などというふれこみでゴソっと近・現代を抜く学校もある。
 これが、時間的問題なのか、それとも何らかの意図で隠さねばならない黒歴史があるのか高校生の頭ではわからない。
 そこにスポットを当てたのが広瀬隆さんの「日本近現代史入門」だ。入門とはいえ、これは近現代史の実態を描いたもので、彼の過去の作品「持丸長者」をさらに進化させた「裏の歴史暴露本」だと言っていい。明治維新のからくりが見えてくるような商人の豪商化、そこから生まれる怪しい金、財閥が形成されると国家と結びついて・・・・つまりはそこが太平洋戦争への道であり、それが戦後にも生き延びて今に至って粗悪な政治体制になっているという事実がじつに克明に描かれる。
 仕組みは、物が考えられない財閥の産みだした国というもの。現代の持丸長者とその手下たちは国民の幸福とか心の豊かさなどひとつも考えないでひたすら儲けることと軍事や軍備、原発に代表されるマイナス産業の拡大を目指していくというわけだ。知らないことは恐ろしい。誰が悪者で誰が従属者か、これ一冊で手に取るように分かる。
ブロッター3  どこでもドアのような戸を開けると階段がある。この階段は地球の歴史そのもので、登っていくと動物たちの進化の歴史までわかる。生物に関心の高い松岡達英さんらしい構成の絵本である。
 いま子どもたちは与えられた道具や知識で生きている。いま役立つものであって、これから役立つかどうかはわからない。まして、過去はどうでもいい、知らなくていいものにさえ成り下がっている。
 物を考えるうえで、歴史的な思考法は重要で、この視点を持たない人間は場あたり的な「その場がしのげればいい」、あるいは「失敗したらそれまで!」ということに陥っているのでないだろうか。深く物が見られない人間は、友人・配偶者、子どもなど、周囲を深く愛せないという指摘もある。
 小さいうちから、生物はどこでどうして発生して、どのように現在まで続いてきたか(あるいはいなくなったか)という見方を学ぶのは重要だ。
 スマホでくださらない情報知識を得ながら育つ子は、やがてこの「ちきゅうのかいだん」を降るのか昇るのか・・・そこまで考えてしまう本だった。
   

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