ブロッター

ブログとツイッターを混ぜて、さらに異論、反論、オブジェクションで固めたものです。で、ブロッターというわけです。毎日書く暇も能力もないので、不定期のコメントです。

2019/春 comment
ブロッター1  古老は書き、言った。
 もしも はてしない物語が、
 自分をそのなかに含むなら、
 この本の中の世界は
 亡びてしまうのだ。・・・・・・・いま世界は没落に向かっている。さて、どうする
 なにかの出だしではないが、この一節、これから始まる物語だ。いまにも壊れそうな世界に少年が立ち向かう物語。「人間の子どもが、勇気をふるい、新しい言葉をこの世界に名付けて行けば世界を救うことができる」。読み継がれて久しい
 これは、ただのファンタジーではない。あきらかに半世紀前に現代社会の虚無を読み取った作者が描いた世界救済の物語だ。いま、言葉が死に、心が失われ、世界が瓦解し始めている。世界を救うのは、子どもたちの想像力だ。この物語を読むべき者は少年少女。世界を救うヒントが、物語の中にある! バスチアン少年! 日本から出よ!
ブロッター2  「夢の長さはマッチ一本分でしかない。そして、夢がなくなってしまうと少女はこごえて死んでしまうのだ。私は、この童話から『夢による救済のはかなさ』を教えられたように思った。
 いつの時代も飢えている子がいる。戦後の浮浪児の時代だけではない。あらゆるものが手に入りそうに見える現代でも飢える子はいる。学校は、「夢を持って努力せよ」と言う。「希望を持てば生き抜ける」と言う。しかし夢と希望で腹が膨れるわけでもない。ここでフリーターやニートたちは絶望から愛国に走り、戦争を希望する浮遊人となる。フードバンクや子ども食堂など「現実の救済」が必要だ。アンデルセンの童話は夢も希望もない暗い話だが、この「マッチ売りの少女」ひとつとっても、寺山が言うように「人にはまず現実の助けが必要」ということを忘れてはいけないだろう。
ブロッター3  「問いと答えと、いまあなたにとって必要なのはどっちですか。
 これだけはしないと決めていることはありますか。
 時代は言葉をないがしろにしているー  あなたは言葉を信じていますか」
 どうも、これは「詩」らしい。実際、長田弘は詩人だ。だが、ここでは畳み込まれるように質問が繰り返される。世の中が嘘と軽佻浮薄の言葉で満ちている現代に、詩人とは何とまあクソまじめに言葉を繰り出すのだろう。
 そこには、世界の考え方や感じ方から存在の仕方までを強く要求している。たった二十五ページの本、それなのにいつのまにか読んだ後、何かを考えている自分がいた。
   

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