ブロッター

ブログとツイッターを混ぜて、さらに異論、反論、オブジェクションで固めたものです。で、ブロッターというわけです。毎日書く暇も能力もないので、不定期のコメントです。

2016/春 comment
ブロッター1  南極探検の英雄・白瀬中尉の後半生が哀しい
 「父は借金に追い立てられ、極地で写したフィルム一巻を携え、全国に映画講演旅行に赴いたのです。住居は転々と十数回かわり、私が結婚して朝鮮に渡ってからは、それがさらにひどく、時には別荘番をしたこともあります。」・・・・ これは南極探検の英雄・白瀬中尉のその後の生活を娘が述べたもの。白瀬の誕生から幼少年期、また軍人になってからの軌跡がえんえんと克明につづられる。その白瀬の晩年を娘が口述したものがこれ。
 アムンゼン、スコットと競争した人物の後半生とは思えない哀れさが漂う。白瀬は、老いてもなお太平洋戦争中を生き、敗戦直後に八十五歳で亡くなった。ある意味、明治国家が生み出したヒーローの哀しい人生である。
 
 「極」白瀬中尉南極探検記  綱淵謙錠・著 新潮社
ブロッター2   猫好きの心を穿つ ねこに未来はないのか?

 「実際、ねこを飼ってさえいなかったら、ねこの一ぴきや二ひきいなくなったってそれで悲しんだりふさぎこんだりするなんてことは、たぶんないですものね。」と猫好きの作者は言う。
 飼っていたねこに突然いなくなられた飼い主にとっては、悲しいとか気がふさぐなどという言葉では表せない気持ちとなる。これを猫好きの詩人が、猫にまつわるエピソードを通して微に入り細に入り伝えてくれる。私も猫好き。「まつとしきかばいまかえりこむ」と書いて貼ると必ず戻ってくる・・・そんなくだりが妙に気になる、「猫を飼うこと自体が、深く人間性をあぶりだすことになる」という。まさに固い棍棒で殴られるような詩人の洞察である。
 「ねこに未来はない」  長田弘・著 角川文庫
ブロッター3  現代も古代そのままで動いていると思う!
 「日本の帝は、太陽の女神の化身、天照大御神として神々と人々を含めた宇宙全体を支配している。」・・・と思われている事実がある、と。
 神話学、民俗学、宗教学を駆使して呪術的世界性を説くフレイザーが日本を語る時の言葉だ。天皇が「明神」(現人神)という称号で人々から呼ばれ、宣命や律令でも、その称号が用いられてきたと断じている。
 そして、さらに日本の神々の上に君臨する存在だとも主張する。もちろん、太古の昔の例だが、常に天皇を神格化したがる勢力が頭をもたげるのは、その宗教構造が現代の日本人の心にも刷り込まれ、脈々と受け継がれているのだと思われる。この呪術の世界を脱しない限り、国民主権・民主主義の到来はない。天皇を担いで国を思いのままに動かそうとする勢力がいる。この危機は、現代にもあるのだからものすごい。

 「図説・金枝篇」  J・G・フレイザー・著 講談社学術文庫 
   

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