ブッククラブニュース
令和3年
11月号新聞一部閲覧 追加分

読み聞かせ・いろいろ

⑦3歳—1

 3歳になって配本される本は、筋立てがしっかりした結末もまたよく考えられおもしろいものがひじょうに多いです。その代表的な本は有名な「よるくま」ですが、これは子どもが置かれている状況や母親の存在というものが、うまくストーリー化されています。こういう話がわかってくるんですね、この年齢になると。母親と同体の意識だった1〜2歳の子が自分を意識し始め、世界や人間関係がわかってくる時期です。相変わらず食べ物乗り物で釣る絵本も多く出ていますが、そんなものに終始せず、もうちょっと高度な物語へ入っていく時期でもあります。
 3歳児への配本は最後がみんな楽しく終わる本がすべてです。途中、ハラハラドキドキがあっても最後は必ず安心感いっぱいのジ・エンド。まちがいなくハッピーエンドで終わります。人間の「不条理」というものがまだまだわからず悲しいものが苦手な3歳児には残念な終わりの物語はふさわしくありませんし、快い眠りに入っていくには(これはとても大切なことです)まずは、幸福感がなくてはいけませんね。いつかは不条理もわかってきますが、それは、まだ先の年齢、その時期にはそれなりの本が入りますのでご安心を。

成長に応じることは大切

 ディズニー作品など、底の浅い作品はあらゆるものが(人魚姫のような悲劇ですら)ハッピーエンドになりますが、これを楽しんでばかりいる大人は3歳程度の頭しかないと言えるかもしれませんね(笑)。やはり成長に応じて、悲しい結末やおどろきの展開がなくてはいけないし、それがないと相手への思いやりの感覚、自分を大切にする考えも生まれません。でも、幼児(6歳くらいまでは)はまだまだ幸福感、安心感が必要な発達過程です。だから大人も見守ってる年齢というわけです。安心を必要とする人格の形成期ですからね。そのつもりで読み聞かせてください。ブッククラブでは、そのような配本を男女それぞれに段階的に配分してあります。
 その中にも、じょじょに自分がどういうものかわかる本(例えば女子には「ちいさいわたし」、男子には「ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ」)のようなものを選んでいますが、自覚への第一歩、大人になるという感覚を得るような本もいくつか組み込んでいます。じょじょに頭を大人にしていく入り口です。

かなりしっかりしたストーリーが

 3歳児の本は多様でおもしろいです。これは読み聞かせる親のほうも2歳のころに比べてはるかに楽しいと感じるでしょう。「だるまちゃん」シリーズの一部や「まゆとおに」のシリーズの一部などシリーズものもたくさん入ります。全部シリーズを配本に加えるわけにはいきませんので、続編も楽しんでくださればありがたいです。シリーズはおもしろいから続編ができるのですが、あんまり続くと中には気が抜けたような作品もありますので要注意。
 でも周囲を見ていればわかりますが、世間では、このへんから本離れ(というよりそういう家庭はもともと読み聞かせもしませんが・(笑))になっていきます。ここでいう本離れというのは図鑑物やキャラクターものへの偏りです。これには気を付けましょう。なにしろ、父親世代がウルトラマンや仮面ライダー育ちの人もいます。のめり込めば高度な本へはつながらなくなります。そのへんことはご考慮ください。(ニュース一部閲覧)

考える力
⑥クイズ・考える練習

 前回述べたように、考えることは簡単そうだが、そうは言っても具体的にどういうふうに考えるかを教えるのはむずかしい。
 学校はすぐに一つの答えを教え、その答え以外の解答を無視しがちだが、考えることは答えを出すこととは違うから、やはり考えることを試みさせないとまずいだろう。
 私は、以前から3年生くらいの、この子は考えそうだなと思う子が来るとクイズを出すことがある。間違うことを恐れて応えない子もいるし、逆に「こう考えた」と何回も答えを出してくる子もいる。これをやると、なかなかいろいろな子どもを見ることができておもしろい。おもしろがってはいけないが、こういう問題を出題するために考えるのも老化防止で(笑)いいような気がする。

クイズ①〜③

 ①カップに紅茶が入っている。砂糖(さとう)をスプーン3杯(ばい)入れたが、紅茶は甘くならなかった。そこで、さらに3杯いれたが、やっぱり紅茶は甘くならなかった。
 どうしてだろう?
 答え・・・・? これはむずかしい・・・・(笑)
 もちろん 3杯とか紅茶とかという言葉にとらわれてはいけない。10杯入れても20杯入れても甘くはならないというのが本筋。コーヒーに置き換えたってかまわない。
 それだけ条件を変えても甘くならないことを考えていくと・・・だんだん見えてくるものもある。
 子どもにその追及力をもってもらいたいのだ。たしかに答えを知ってしまえばすぐ答えが出せるから時間の節約にはなる。しかし、それは頭の節約もしてしまう。巨大な課題にも応用できる追及力の育成でもある。
 例えば市場経済で国債で株を買い、株価を維持すれば儲かると考えるとする。ところがいくら国債を投入してもあるところから株価が上がらない。なぜだろう。さらには何かつまらないきっかけで大暴落が起きたときに儲けは残るのか残らないのか・・・・こういうことを考えるうえでもおもしろい追及力の育成にもなるのではないだろうか。

さて次のクイズ

 ② ある人が、A地点からB地点まで歩いて行くと30分かかる。ところが二人でいっしょに行くと35分かかった。歩く速さは同じです。さらに3人で行くと40分かかり、4人で行くと45分かかる。なぜ一人増えると5分ずつ時間がかかるのだろう。 答え・・・・?
 これは、いろいろな考え方ができるが、多くはみんなが話したりして速度が遅くなるとか、一人遅い人がいるとか、いろいろな説が出るが、考えるポイントは一人増えると5分遅くなるということである。これは絶対に変えてはならない条件だ。とすると、5分かかる何かを考えなくてはならなくなる。

3問目

 ③100m先にイノシシがいる。猟師(りょうし)が持っている弓では矢は80mしか飛ばない。
 ところが猟師が放った矢はイノシシに当たった。
 どうしてなのだろう。答え・・・・?
 と、まあ、こういうクイズを出す。答えはいっぱい出るが、正解はたくさんある。答えを何通りか考えられるというのがミソで、それは解答や解法の検証も頭の中で伴うから頭の訓練にもなる。最近は正解を先に求めてくる子も多くなったが、これも「すぐに答えを知りたい」という現在の世の中の状況の影響かもしれない。まずは考えることが楽しくなるようなことをさせてみたい。

本とともに過ごしてきて

 東京都新宿区 芳賀さん 兄(小5)妹(小2)
 ゆめやさんをご紹介いただいたことは、私にとって何よりもうれしい出産祝いでした(あきちゃん、本当にどうもありがとう)。
 昔読んだ愛読書を子どもに勧めたくても、何歳頃読んだのかという記憶は曖昧です。以前ゆめやさんに、小3の息子に「はてしない物語」を読ませようとして笑われてしまいました。また、新しく発売された本の中から良書を素人が一から探し出すのも至難の業です。「西遊記」「三国志」などは、訳や編者により長さも様々で、どの出版社のものを与えるべきか大いに迷いました。「ドリトル先生」「星の王子さま」なども旧訳と新訳が書店に並びます。
 それらを読み比べるほどの根気も判断力もない私にとって、ゆめやさんは児童書の駆け込み寺のような存在です。「銭天堂」などのややくだけた本も、ゆめやさんが選んで下さったのだから、と安心して読ませることが出来ました。やわらかい本ですが、子どもを本好きにする力があると納得できました。ゆめやさんは、子どもの発達段階に適切な、かつ子ども自らが思わず読んでみたくなるような巧みな選書を届けて下さいます。
 お陰様で子どもたちは本好きに育ち、その事が自分の自信になっている様子です高学年になると宿題も増え、一人で読書したい気持ちも芽生え、かつてのように毎晩寝室で本を読むことは難しくなりました。あと何回一緒に本が読めるのか、読み聞かせもカウントダウンに入ってきたと感じます。
 幼児期には、忙しい家事の時間を割いて「読み聞かせてやる」という気持ちもありましたが、今はあと何回「読み聞かせさせてもらえるか」という心地で村岡花子訳の「赤毛のアン」を読んでおります。
《ゆめやより》
 たしかに銭天堂はさほどしっかりした本ではないのですが、各学年で本を読む自信をつけるための工夫をしています。一年の「よい子への道」2年「正しい暮らし方読本」、3年のこれ。各学年の最初では後半の長い、あるいは内容の濃い本に行っても関心を高めて読めるように自信がつく本を設定しています。これをすると意外に面白いと感じて本に向かう子もいるのです。すべて内容の重たい名作では子どもは疲れてしまいまいますからね。
 芳賀さんとも長いおつきあいになりました。新宿は甲府から1時間半です。ただ最近の新宿はまったく町並みがわかりません。変わらないのは新宿御苑でしょうか。あそこなら行けます。コロナが終わったら新宿御苑の茶室・楽羽亭で抹茶でも立ててもらって、同名異本のお話でもゆっくりできたらなと思います(笑)。

関心のある方をお誘いください

 ご友人・お知り合いのお子さんで2歳未満の方がいらっしゃったら、ぜひ配本をお薦めください。ご住所とお名前を教えていただけば、こちらから左のような案内をお送りいたします。また過去一年間のニュース・新聞のバックナンバーも同送して目を通していただくようにいたします。ご紹介でなりたっているブッククラブですので、関心のある方をお誘いください。よろしくお願い申し上げます。
 なるべくまっとうな子育てで行こうという方を多くしたいと思っています。いまはかなりそれがやりづらい世の中ですから・・・・。
 親が読み聞かせができる方ならば、満足のいく結果が得られると思います。ご承知のように配本プログラムはすべて個別で性別・季節対応・兄弟姉妹対応などけっこう複雑に対応して構成されます。

自分で考える力??
⑥ コロナ禍の二極分化

 ここ数か月の間、会員からのおたよりを読んでいると、低中学年でタブレット授業の影響や学習課題の詰込みで、読書量が減ったというものが多かった。子どもは目新しいものには関心を示し、その操作は大人の百倍も速く習熟する。のめりこむのは無理もないことだ。
 それで読書量が減ったということ自体には私はあまり危機感がない。だって、一般で、それまでにも読書量が多かったかどうか考えればブッククラブ会員のお子さんたちの読書量ほどのことはないだろう。
 すくなくとも、読み聞かせとはいえ5,6歳の配本で小1・2レベルのものはかなり頭に入っているはずだ。問題は、ここから脇道のSNSやゲームに没頭していかないか?ということである。今や子どもにとって、いや大人のほうもインターネットは必要不可欠になっているわけで、禁止などできない。学校は言うだろう。「使いこなせなければ時代に乗り遅れた子が出る。大人になって情報貧困では困る」・・・なるほどもっともだ。しかし、今の大人のことを考えてみよう。ネットが充実してたった20数年、老人でさえうまく使えている人がいる。その気になれば一週間で操れるもので、知識や情報を検索する力の前にいかに、きちんとした考え方があるかどうかを問うたほうがいいのではないだろうか。高学年ではラノベ恋愛ものや物語化したゲーム媒体へののめり込みが何例も報告されてきた。
 大人でさえ「いまこのドラマに出ている主役、前の奥さん誰だっけ? ネットでちょっと・・・」というような引き方ばかりという人もいる。文を書く練習がなければ、レポはみんなコピペになるだろう。これでは何の意味もない。とは、いえ、タブレット学習やゲーム機を個々の家庭で使用禁止にはできない。学校には逆らえない。
 私は、残念なことだが、行きつくところまで行くと思う。次の時代は世の中がかなり劣化すると思う。いまの若者を見ているとそういう感じはなおさらだ。テレビ番組を見ればさらにその感が強くなる。考えて行動するのではなく流行に乗ったウケ狙いの行動ばかりしていたら人間が劣化していくのはあたりまえだろう。その向こうには引きこもりに近いオタク集団がいて、さらにはSNSの闇がある。いかにしてうまく避けて、どのようにかいくぐっていくか・・・名案はない。だが、子どもたちは次の次の時代を生きる。そこを生きられる思考力をいまのうちになんとか持たせたいなぁと思っている。(新聞・一部閲覧)

なんと、こんなおたよりが・・・

 ちょっと悲しくて、そしてありがたいおたよりの紹介です。掲載しようかどうか迷いましたが、都合が悪いものを隠蔽したらこの国の政府と同じ(笑)なので、こういう例もあるということでお名前は伏せて載せます。世の中にはいろいろな考えがあり、いろいろな子育てがあります。個人的には、どんなことにも頑張ってほしいと思う立場です。そしてまた、幼児期の読み聞かせは、親と子の関係を濃密にするとも思っています。それがあれば思春期も問題ないと信じます。なにより、お子さんが読まない本を6年間も取っていただいたことに驚くとともにひたすら感謝するよりありませんでした。人にはそれぞれ得意分野があり、さまざまなところで活動していくというのが人間の多様性のよさです。とても否定はできません。

「おたより」

 中京地区 〇・◇さん □くん(小6)
 いつもお世話になっております。寄稿を依頼されているにかかわらず投稿できずに申し訳ありませんでした。我が家の実情を説明致します。
 配本を始めたのは息子がまだ赤ちゃんのとき、Sさんの紹介がきっかけです。幼稚園のころまでは読み聞かせを楽しみにしておりました。小学校に入学すると同時にドッジボールのクラブチームに入部しました。同時にピアノ・水泳・習字も始めました。あとは、ゆめやさんが危惧する通りの生活。ドッジボールは週6回、平日は19時から2時間の夜間練習。土・日は終日、試合か練習。その合間を縫って他の習い事、友達の遊び、チームの毎日で6年間が過ぎました。配本される本は夏休みの宿題のときに開くだけで新品のまま本棚に並ぶ日々です。
 結局、本を読める子に育つことができませんでした。なので「本とともに過ごしてきて」を書くことができません。「いつか読む機会をつくってほしい」という願いだけが過ぎてしまいました。
 息子はドッジボールの全国大会に出場し、日本一を取りました。チームは「昭和」の監督の下、根性・感謝を教えてくれますが、日々の息子の生活を見ていると、なかなか身についているとは思えません。でも、ドッジが好きだから6年間がんばって続けました。クラブチームは親同士もかなり時間を共有しますが、その共通体験が将来もつながっていくか? 私自身が、この体験を通して、さらに成熟した大人になれるのか? 他の親や子どもたちへのねたみやひがみの方を多く感じているのではないか?
 寄稿できるような読書状態ではないこと、それでも本人は配本を続けたいと言っていました。時間ができたときに読書に向かわせても遅くはないでしょうか? 本に興味がないわけではないではないと思いますが、少しでも読めればと思っている次第です。寒さに向かっています。どうかお体には十分お気をつけください。
《ゆめやより》 時間ができたときに読書に向かわせても遅くはないか、という質問はとてもお答えがむずかしいです。それなりの本が読めるにはそれなりのプロセスが必要なのが普通で、まず本に手が出ないのが自然です。もちろん中には全然、読んでこなかったのに中学・高校で読書家になる人もいます。でも、しようもない本ばかり読んでいたのでは「読書家とはいいがたい」ですし、やはりわかっていくには相応の頭の中の組み立ても必要と思っています。
 ただ、一般でも、ほとんどが本など読んでなくて適当な知識で世の中を渡っている人も多いので、本を読んだから大丈夫というものではないでしょう。まあ、できるかぎり物事に関心を持って、実体験以外の想像力の世界も知ってもらいたいと思っています。



(2021年11月号ニュース・新聞本文一部閲覧) 追加分



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