ブッククラブニュース
平成27年9月号(発達年齢ブッククラブ)

いちごの王さま 万歳!

 発送している会員から手紙や、ハガキ、振替通信欄でいろいろなお便りをいただきますのでいつも返信をします。そうしたら先月末、数通「ブーイング」(?笑)みたいなお便りがありました。出したハガキにキティちゃん切手を貼ったからです。すぐに「ゆめやさんでもアニメキャラの切手を使うんですね」というような通信をいただきました。9月現在、まだ貼りつづけています。間違えて切手を買ったわけではありません。サンリオ発行の「いちご新聞」の8月号に社長の辻さんの意見記事が載っていて、痛く共感したので、「何かできることは」と思い、たまたまキティ切手が地方版・全国版と売り出されたので使っていたのでした。
 でも、さすがにブッククラブのお客様方ですね。「私の言っていることとやっていることの不整合」に鋭いです(笑)。「サブキャラ嫌いのゆめやが何でキティちゃんを?」ということでしょうが・・・・ま、安倍政権の言ってることのように前に言ったこととまったく正反対のことは言ったりやったりしませんよ・・・・・これは、まあ同じ意見を持つ者として、渡世の義理、せめてものお礼返しということでしょうか。
 さて、サンリオ社長の辻信太郎さんは、いちご新聞をもう40年も出していて、そこには「いちごの王さま」のメッセージを毎回掲載しています。8月号には戦争反対のことが書かれていました。長い文章なので一部引用したものを、このニュースの裏面に掲載しますので、ぜひ読んでください。
 こういう時代ですから、大人が自分の利益のために平気で嘘をつくことは連日の報道で誰もが知っていますが、私は、この「いちごの王さま」のメッセージが嘘でないことを確信しています。なぜか!? 私は「いちごの王さま」が、昔から人にやさしくすること、人を助けることをしてきた家系であることを子どものころから知っているのです。
 何を隠そう、ゆめやも開業最初、王さまには助けられました。開業3年・・・ブッククラブすら成り立っていなかった小さな小さな絵本屋。そのとき私がお願いしたのですが、「いちごの王さま」は、当時、人気だったサンリオの『カントリーダイアリー』『シリウスの伝説』、『妖精フローレンス』などの大人向きの本から子ども用のハンドブックまで出版部に話して、ゆめやに破格の値段で送ってくれたのです。さらに「いちご新聞」の販売も「やってみないか!」と声をかけてくれました。

悲惨な戦争を知る人は・・・

 絵本など買う人が少なかった甲府の町で、ゆめやがなんとか最初の難関を突破できたのは辻社長の助けがあったからでした。ゆめやが今日あるのは「いちごの王さま」のお陰と言っても差支えないと思います。そればかりではなく、私はほんとうに小さい時から辻家にはお世話になっていました。生まれたばかりの時からです。「いちごの王さま」が大学三年のときに私が生まれたのですが、その産湯を沸かしてくれたのは辻家のおばあちゃんでした。ですから、「いちごの王さま」が、戦争を嫌いで、人と人が助け合うことを目指しているのは、その周辺の方々の話から何となくわかるのです。1945年7月7日の甲府空襲で、「いちごの王さま」の生家も、すぐその近くの私の家も跡形もなく焼けてしまい、知り合いの多くが死んでしまいました。写真は甲府の桜町という地区で赤い×印が辻家があった三省楼という大きな料亭ですが、完全に焼け野原です。残ったコンクリートのビルは松林軒というビルですが、内部はすべて焼失しています。私の家は、この×より手前の角を曲がったところにあります。そこは最初にゆめやを始めたところでした。この瓦礫の中から残った者は何とか助け合って戦後を生き延びましたが、その助け合いがサンリオの創業理念につながったのだと思います。
 ゆめやの開業時には、まだサンリオは五反田のTOCセンターにありました。私はその社長室でファンタジーの話や物語のことについていろいろ社長から聞きました。『シリウスの伝説』も『妖精フローレンス』も社長の自作でした。そのとき「なんで絵本屋を始めたの?」と言われたので、私は「私も面白い物語で育ったので・・・」と答えました。
 戦後も世界中で戦争は続いていて、争いをなくしたいのは私の思いもいっしょです。なんといっても朝鮮動乱やベトナム戦争の悲惨さはリアルタイムで見てきたのですから、戦争が何の利益にもならないこと、戦争で死んだ人は「死に損だ」ということを肌で感じていました。だから8月号の「王さま」のメッセージに共感なのです。「いちごの王さま」に再び感謝の気持ちを抱きました。(9月号一部閲覧)「いちごの王さま」のメッセージは引用で「追加分」に入れてあります。

空元気(からげんき)でやってます!

 この間(9月1日午後三時半)、山梨放送(YBS)のラジオ番組でしゃべった。すごくかわいらしい若い女性アナウンサーが二人、店に来ていきなり生放送で中継・・・こういうのは慣れていないので声が上ずってしまう。だいたい私くらいの年齢になると、若くてきれいな女性には弱いところがある。私などは場数を踏んでいないのだから、それが公共の電波で流れると思っただけでも落ち着いて話すことができなくなる。何を言いだすかわからない自分が怖くなる。
 「店をいつから始めたか?」「なぜ絵本屋をしようと思ったか?」など次々に聞かれた。考えて見れば、この若いアナウンサーたちが生まれたときより古くから始めているから、「当時のことを話してもピンと来ないだろうな。」と思いながら、いつもゆめやのニュースで書いていることを話した。「1980年の開店。ちょうどゲーム機やアニメが大流行をはじめて、こりゃあ子どもの未来があぶないと思って、少し時代遅れのことをしようと無謀にも始めた。」と言うと、やはり不思議な表情をしていた。若者にとってゲームやアニメ、マンガはもはや「日本の誇る文化」である。若い女性にとっては、「それのどこが悪いの?」「かわいいキャラがたくさんあるのは幸せ」ということだろう。かみ合っているかいないかわからないが、まあ、自論を言うよりない。しかし、ここでも規制がないのだから報道としてはとても自然で好ましいことだと思う。
 次に「子どもたちは昔と今で変ったのか?」と質問された、「昔は、どの家庭も読み聞かせや読書の時間的余裕がありましたけどね。バブルの後あたりから、子どもの世界にいろいろなものが入り込んできて・・・やはり、SNSの影響を依存型で受けないこと、学校の教科書がすべての答えであることを信じないこと・・・そうでないと自分の考えが出てこないのでね。やはりいろんな本を読んで自分の考えが出てくることはないですから・・・」と続けた。
 しかし、彼女たちは、その世の中の傾向が強い時代に生まれて育ち、おけいこ事も受験もサブカルもネット関連も体験してきているので、悪影響が人間に出ているとは思っていないだろう。私は完全に「時代遅れ」である。
 ここで悪戦苦闘のようなことをしているといったので、今度は「その元気の秘訣は何なのでしょう?」と質問が来た。
 「ウーン・・・元気の秘訣ねぇ・・・。べつにそんなものはないのですが、しいて言えば、今はね。空元気(からげんき)かな・・・申し上げましたように読書という時代遅れのことをやっているので、世の中の大きな力や強い流れに逆らうことになります。ですから、そういう力や流れに立ち向かう気持ちが私の元気の秘訣なんじゃないかな。だんだん立ち向かうものばかり多くなり、元気にならざるをえませんが、朝起きてラジオ体操をするとかスポーツの練習とかで元気をつくるのではなく、・・・ま、あとは寿命にまかせるということで・・・」と結んだ。
 しかし、こういう自由なやりとりは報道では、前述のごとくひじょうに大切なことである。どのような事柄に対する意見でも、意見には個人差がある。それをある一つの基準でまとめたら多様性がなくなり、暗い世相に突っ込んでいくことは80年前のメディアがやってわかりきったことである。

言葉が死ぬと誰も責任を取らない

 放送が終わった後で考えた。何度も言うように生である。私は建前など無視して平気で本音を語ってしまうタイプだから私がしゃべっているときに監視も必要なのだろうが、じつは山梨放送では初めから注文もつけなかったし注意もなかった。自由にしゃべってしまったわけである。もちろん、何をしゃべろうと生だから編集もできない。私の言ったことは守らねばならないし、責任を持たなければならない。言い逃れで「解釈変更」したらみっともない。
 表現は自由だが、言葉に責任を持たねば、この世の中はおかしくなる。 
 さて、この放送をした山梨放送は山梨日日新聞社と同じ系列の報道機関で、山梨日日新聞は現政権にもかなりコピッと物を言っている新聞である。どこかの議員が「新聞のスポンサーがなくなれば物が言えなくなる」というようなことを言って沖縄の新聞に圧力をかけたが、そういう圧力に屈したのはNHKだけだった。まあ、読売系、産経系はもともと右寄りの報道姿勢で、圧力に屈したわけではなく、それはそれでもともと「個人差(企業差)」である。だが、NHKのテレビなどは国会をたくさんの群集が取り巻いても報道しないという偏向姿勢が急速に強まった。NEWS23あたりを見ているとこれが同じ報道かと思う。NHKのラストニュースでは安保法案のやりとりなどまったくとりあげず、スポーツや芸能人のニュースから始まったことさえある。
 80数年前、メディアが戦争協力をしたことに対する反省があったのはずだが、強引な力の前に屈服している。あのときは治安維持法・・・いまは特定秘密保持法。NHKは秘密保持法の閣議決定が行われ(2013年10月25日)、その論議が盛り上がっていた時に、トップニュースは何と歌手・島倉千代子の死去報道だった。メディアが沈黙して、国民が何もわからなければ、そして戦争案件まで秘密保持されれば、国民は法案の内容がわからず、何を守るのかもわからなくなる。
 しかし、山梨日日新聞は、きちんと物を言い続けているメディアで、かなり反安倍色が強い。そのせいか去年の山梨の衆議院選挙では自民党公認候補が全員落選した。これは沖縄県と山梨県だけの快挙である。こういうふうに見ていると、報道の自由、言論の自由、表現の自由・・・これは何より大切なことだと思う。本音が言えなくなったときは、その国が国民に危険な国になっているからだ。空元気でも踏ん張らなければ危ない。圧力に屈しないのは立派なことだ。どこまでがんばれるか。
 この夢新聞をみなさんが読むころは安倍政権は戦争法案を60日間ルールを使ってゴリ押しで通していることだろう。こういうものが通れば、どんどん国は息苦しく暗くなっていく。それは大人にも子どもにも都合のよくない国になるということである。
 でもまだ、少しは日本にも民主主義も残っているようなので、次の国政選挙では何とかしたい。それができなければ、この国は、本音から出る「言葉」が死んでいき、国民の頭のレベルに見合った国にしかならないだろう。だから報道は大切だ。言葉が死ねば人は壊れ始める。(9月号新聞一部閲覧)



(2015年9月号ニュース・新聞本文一部閲覧)

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