ブッククラブニュース
平成31年4月号(発達年齢ブッククラブ)

桜咲いたら新入園

 親も子も期待と不安に満ちたスタートラインですが、その向こうに希望の未来が開けていることを信じて送り出したいものです。
行きたくなくて毎朝グズる子もいるでしょう。あるいは親が寂しくなるほどサッと園になじんでしまう子もいると思います。
 でも、ここは、まだまだ親との接点がいっぱいあること、いっしょに過ごす時間がたくさんあること・・・それに何より遊ぶ時間が多いこと・・・・これが大人になって充実した人生を送るおおもとになる園時代の「生活」だと思います。
 とかく馬鹿親は、こんな小さいうちからお勉強をさせたり、お稽古事をさせたり、まだ人間の基本ができないのになんやかんやと習わせる・・・いいですよ、お金持ちの家庭が親が密着してするなら・・・。でも、いまお金だはある、あるいは無理してお金は工面してすべてが外部依存の子育て。幼児の楽しい時代が圧迫され、やがては歪んだ子どもが出て来そうです。いやいや、もう世の中の事件を見ていれば、その弊害が異様な形で起こっているのに気が付かないでしょうか。
 ひきこもりをはじめ、仕事もろくにしないで人生を終わっていく・・・さらには日を騙す、物を盗む、殺したり、傷つけたり・・・子どもたちがのびやかに遊んでいた時代にはなかった現象です。お金があるって恐ろしいことでもありますね。
 新入園、おめでとう!ですが、これから始まる子どもの物語。虹色の雨が降り注いでみんな素晴らしい人生が送れますように! 大きなエールを送ります。

大人になってからの生き方が決まる

 子どもたちは、この先、十数年、習ったり、学んだりすることはたくさんありますが、やがて仕事を見つけ、人生を送り始めるはずですね。ただ、世の中を見ていると、みんながみんな幸せで豊かな生涯を生きるというわけでもありません。豊かでも不幸だったり、思っていたことと違う道に行ってしまったり、つねづね、どうしてそうなるのだろうと思っています。やはり幼いころの家庭環境が悪かったり、心を病む原因になるようなものが与えられたりすると大変です。
 幼児期にうまく心が形作られないと、どこかで夢を失ってしまって、目先の欲で横道にそれてしまう可能性も高いのです。家や車を持つのが最終目的になったり、そのためにお金を稼ぐ人生になる。すると・・・、選んだ仕事は、それなりのものとなり、子どものころ漠然と抱いていた夢がどんどん消えていって、どこかで「しかたがない」というあきらめも生まれてきそうです。どうしたら充実した仕事、充実した人生を送ることができるか?
 大人は子どもたちに生き方を教え育てているでしょうか。その子がその子なりの人生を送るための適した仕事を得る手助け・・・ワンパターンの高学歴・高収入・・・なんでもいいから豊かになればというもので競争させていいのか、悪いのか。大人になってからの仕事選びは幼児期の遊びや家庭環境の中から生まれるものです。

天職を見つけるために

 仕事というと「天職」という言葉がありますね。天職・・英語ではCalling、ドイツ語だとBerufung、いずれも天からの呼び声「これをおまえがせよ」という意味です。この言葉を「天職」と訳した幕末の漢学者はすばらしい。きちんと言葉の意味がわかっていたからです。天職を得た人は、どんなに大変な仕事でも幸福だと言われています。
 天職・・・・子どもたちにも与えたいものです。
 私は若い時、この言葉の意味を英語の教科書で知りました。たしかUnicornという英語教科書に載っていた伝記の抄訳で題名は「Johny Appleseed」ということを記憶しています。
 まだニューヨークがニューアムステルダムと言われていたイギリスの植民初期のころのこと。Johny Chapmanという入植者の男がリンゴの種の入った麻袋を担いで東部諸州や中西部に種をまいて歩き、現地の人に栽培法を教えていたというのです。アメリカ版、「木を植えた男」です。彼はおだやかな性格でインディアンとも仲が良く、動物たちとも交流があり、生涯、広大な土地に種を植えていき、ついにリンゴはアメリカの主要果物になったという話です。
 なんでもそうですが、はじめはこういう素晴らしい人が出て来ます。ほどなくして、ゴールドラッシュで欲に駆られた国造りが始まります。でも、その前にアメリカ東部にはリンゴの木が身を付け始めたのでした。「大草原の小さな家」に出てくるアップルパイはその代表ですね。Johny Chapmanはやがてみんなから愛され、天職をまっとうします。自分のことより世の中のことを考えて仕事をしたからです。
 彼は生きているうちには賞をもらったり、賛美されたりしたわけではないのですが、J・Appleseed(リンゴの種のジョニー)と呼ばれて、やがて大きなものを生んでいくのです。

Big Apple

 やがてニューアムステルダムはニューヨークになります・・・なんとニューヨークの愛称はいまBig Appleですよね。チャップマンのリンゴはチャップマンの功績を越えて、どんどん人々の頭の中に入っていき、ニューヨークの象徴にまで発展したというわけです。アップル・・・スチーブ・ジョブズのアップルを思い出す人もいるでしょう。このアップルも粗野な食べ方をした結果の産物。ある意味、西部開拓史のゴールド・ラッシュのような凄まじい波を政界に広げました。それが、私たちが使っているパソコンやIphoneもじつはJohnyに由来したアメリカの象徴を意味するものだったというわけです。スチーブ・ジョブズは金鉱を掘り当てた人のように大金持ちになり。立志伝中の人物ともなりましたが、それは人々を際限のない忙しさの中に追い込む天職だったのかもしれません。ここが、ジョニーと大きく違うところのなんですね。木を植えた男もほとんど無名で仕事を終えたら天国に旅立ちましたが彼は南仏・プロヴァンスを荒涼とした大地から緑の森に変えたのです。ジョニーチャップマンの天職も「りんごかもしれない」チャラけたリンゴではなく、人々の口に入る本物のリンゴを植えて歩くだけ。でも、このすばらしい仕事をジョニーはやってのけたわけですね。

Grow slow and steadily

 園は、子どもがまず最初に遊びながら人間関係や物事の成り立ちを学ぶところです。みんなと一緒に何かする、同じ時間に同じ場所で・・・「自分が動かないとなにもできない」ことを学ぶところです。まともな園では多く子どもたちを見守っているのが保育でしょうね。言ったからといって、すぐに実行できないのが幼児。何回か繰り返せばできるようになりますが強制的に受けた訓練は成長してから考えや行動にひろがりを作り出しません。急がないこと。最近、他の子と遊べない子やセッテイングされないと遊べない子が増えてきているといいます。それは、行動の原型になる一人遊びや複数の友達との遊びがなかったからでしょう。近年は家庭は「夕食を食べさせて入浴させて寝るだけの場所」というところも見受けられます。さらに子どもの時間的余裕がなくなるほど過度なお稽古事、過密スケジュールの日常、幼い子は親が絶対なので言うことを聞くでしょうが、過ぎたるは及ばざるがごとしで、すべて適度、適度ですね。
 子どもは遊ばせましょう。何が無くても子どもというのは自分の頭を使って遊ぶものなんです。遊びが想像力と創造力を生み出します。いまは、その実体は見えませんが、やがて大人になり、仕事を始めれば力を発揮するようになります。天職はそのとき天から降ってくると思います。
 まあ、あせらず慌てず、この時期の子どもとは付き合いましょう。ほかの子と比べて育てれば消耗するだけ損です。向こうは向こう、こっちはこっちと割り切って。このくらいの時期でないと共にいる時間は少ないです。子どうもはあっという間に大きくなってしまいますからね。
 私は、子どもといる時間を長くしたいだけで自営業の絵本屋を始めましたが、天職とはいわないまでも、長く子どもと接する幸せな時間を持てましたし、これはお金やしさにゃレジャーに代えがたい黄金の時間だったと思ってます。娘たちもそのせいか、この慌ただしい時代に二人とも専業主婦です。

「本とともに過ごしてきて」

 東京都世田谷区 弘中和子さん 春佳さん・優佳さん
 必死だった海外での育児。赤ちゃん2人のお世話で手一杯だったころ、子どもたちに日本語を触れさせたい、そのための絵本がほしいと思っていました。絵本といってもピンキリでどれがいい本なのか分からず悩んでいました。そんな時、日本にいる友人からゆめやさんを紹介してもらいました。信頼できそうな本屋さんの素敵な絵本を、海外まで配送してくださるということを聞き、どんなに嬉しかったことか。それからずっと毎晩本を読んであげる習慣ができました。絵本の絵を見るのも好きでした。日本語を読んであげることができるのが嬉しかったです。毎月の絵本をサンタさんからのプレゼントのように子ども達は心待ちにしていました。配送が困難な場所にも絵本は届きました。実家に送られる本を受け取ったこともありました。色々な過程があって、今は日本で本を受け取っております。成長に合わせた本を1冊1冊大事に楽しませていただいています。
 【ゆめやから】アメリカからブラジル・・・まさに地球の裏側までずいぶん追いかけさせていただきました。サンパウロから送っていただいた日焼けしたお嬢さんたちの写真はまだ貼ってありますよ。あれからもう十年ですね。こちらのほうがお世話になっています。ありがとうございます。
 ここ数年、外国便はmissing baggageの問題で、ほとんどがご実家から送るのですが、あの当時は荷物を梱包して郵便局に持って行き、船便やSAL便で出していました。なつかしいですね。ブラジルのときはとにかく治安状態が問題で、勤務先に送らないと途中で盗まれてしまうという話でした。弘中さんのお便りはその後の外国便発想の参考になりました。その意味でもありがとうございました。
 お嬢さんたちの外国生活は、いつか必ず大きく実を結ぶと思います。それを本の中の物語がきっと大きくサポートしてくれるでしょう。楽しみです。

桜咲いたら小学生

 入学式は、四月八日の月曜日のところが多かったようですね。甲府は、ほぼ日本列島の中心で、この時期、桜が咲き誇ります。この列島は南北に長いので、桜が蕾(つぼみ)にもなっていないような入学式もあるでしょうし、逆に咲ききってしまった入学式もあるでしょう。でも、春はすべてが芽生えの季節、入学にはふさわしいシーズンです。暖かな光、たくさんの花々の開花、桜吹雪と木々の芽吹き、・・・子どもが幼児から少年少女になる区切りとしてピッタリの季節です。
 植物は健気に花を咲かせました。庭にはメジロやオナガがやってきて花芽をついばんでいます。温暖化で危険な状態になっているとはいえ動植物の生命力の強さにはおどろくばかりです。
 季節に合わせて成長し、無理もせず育ち、変化していく巧妙な生命の力には脱帽してしまいます。
 そういえば、日本人も四季に応じて多様な力を発揮する動物ですよね。一時期、欧米に見習って「入学を九月にしよう」という議論が出ましたが、いつか立ち消えました。季節に敏感な日本人には受け入れられなかったのでしょう。グローバリズムで、いろいろな変化や異常が起きている世の中ですが、それでも花は咲き、鳥がさえずります。

喜びと不安

 でも、子どもを新しい環境に送り出すのは親には喜びでもあり。不安でもあります。親として当然のことです。「よくもまあ大きくなったものだ!」という驚きから「「大丈夫かな?」「やっていけるかな?」という不安まで・・・。これが育てるということなのかもしれません。
 たしかに、以前とちがって子どもの周囲は多くの問題があるように見えます。常識崩壊の親に育てられた子が教室を跋扈(ばっこ)することもあるでしょう。子どものころから無制限に流行り物を与えられてきた子が我が物顔でのさばるのも今始まったことではありません。自分の子がそうならないようにして、そういう親や子からどう距離が保てるか。ここを考えておかないと何かあったときに毅然と立ち向かえません。学校も追い立てるだけで、あまりあてにはならない時代ですからね。
 ところで話はそれますが、春は卒業と入学の季節で、その挨拶にたくさんのお母さんとお子さんが店を訪れました。中学に入った子、高校に入った子、大学に入った子・・・新入生のころの幼かったときとは背丈も顔つきもちがってきていますが、いずれも共通して目に輝きがあり、相変わらず私との会話も弾みます。こういう子たちを見ていると、世間で騒がれているような子や青少年がほんとうにいるのか、とさえ思えるくらいです。
 考えてみれば、ふつうの家庭で、ふつうの親に見守られて育ってきた子どもがおかしくなるわけもないのです。乳児期からの、ちゃんとしたサポートがあれば安心していいわけです。子どもは、ちゃんとやっていくはずなんです。さて、さて、新一年生・・・おかしなものに影響されないで行かれるでしょうか。大きなエールを送りたいと思います。

変化の大波は来るけれど

 ただ、これからは学校もどんどん変わっていくでしょう。ここ数年でかなり変わりましたし、親が抱いている学校観とは違ったものにどんどんなっています。市場原理の波さえ学校を襲っています。:効率優先で数値で測る・・・母国語を無視して英語にシフトする、教育目的もあいまいなプログラミング学習をさせる・・・より考えさせない教育に代わっていきますね、ますます。
 そのうち何を目指しているのかもわからなくなってきます。子どもを何にしたいのかさえ・・・。でも、いずれ、それがどうにもならなくなって、みんなが、「これではダメだ!」と気がつくときも来ます。悲惨な状態で気づくのでは困りますけど。
 環境問題や他の社会問題と同じ。こういうことをしていたら、けっきょく自分の首を絞めるのだということが分かっています。(いくつかのすぐれた本の中には、ごの状況を打開して安心に暮らせる術のようなものが述べられていますが、なかなかそういう本の影響は現われません。みんなが読みませんからね。スマホの中には答えはないのですが・・・。
 環境が壊れてもいいから儲けたい人々は原発を再稼働、プラスチックは消費拡大で、次世代のことなど考えません。しかし、子どもは、柔軟に周囲に対応しながら健気に生き抜くものです。親が思っている以上に・・・・一番遅れているのは大人のほうかもしれないです。
 この国を指導している人もだんだん低劣になっています。日本をいかに良くするかを考えないのですから羅針盤を見ても儲ける方向にしか舵が切れないのでしょう。教育は変化が一番遅くやってくる分野です。元に戻す研究や活動がもっと進めば変わるかもしれませんが、まだまだ教育は前近代的な企業戦士や情報戦士をつくる場所でしかないです。ほんとうはまた戦士をつくりたいのかもしれません。

なんか間違っているような・・・

 中国の映画なのですが、「初恋の来た道」という映画を観ていましたら、学校の先生が小学校一年生に教科書を音読している場面がありました。先生が一行読むと生徒が後を追って大声で続くのです。
 「人の世に生まれたら志あるべし/書を読み、字を習い/見識を深める/字を書き、計算ができること/どんなことでも書き記すこと/今と昔を知り、天と地を知ること/そして、どんな出来事も心にとどめていよう・…」教室にいる一年生たちの可愛らしい声がこの言葉を繰り返します。この中で、日本の学校で行われているもの・・・「字を習い/字を書き、計算ができること」だけでしょうかね。こんなものをいくら高度にやったところで成績はよくなるかもしれないが、頭がよくなるわけがありません。実際にいま政界や官僚の世界で起きている不祥事や腐敗は「志のなさ」に起因しています。不都合な書類の廃棄でも改竄でもさらには虚偽記載でもする・・・「どんなことでも書き記す」基本が忘れられています。、全体的に歴史認識が不足しはじめ「今と昔を知る」ことがないため、平気で歴史修正がおこなわれている始末です。「天と地を知る」は自分の位置を定め、どう生きるかを考えることですが、多くの人が市場原理の波に飲み込まれて目先の欲だけで動めいています。そして、忙しさの中で生きる上で必要なことを「心にとめて」いません。そして子育てでも親や子どもは偏差値や周りの風潮には弱い・・・なんか間違っている!と思いますが・・・ね。行きつくところまで行かないとわからないのでしょうか。

最終目標は?

 成績が悪くても高校へも大学へも入れるところが出てきました。最近は大学生と話しても議論すらできませんし、3月号で述べたように基本的な知識もないのです。むずかしいセンター入試を経てきたのにね。それでも学校はまだ競争を進めています。小学生が大きくなるころはもっとレベルが下がっている? 親が子どもに接さず、銭・金・物に狂っているから必ずそうなる。そういう状態から子どもを抜け出させたいのですが・・・。
 私がこの数十年見てきて、ちゃんと成長して大人になった「子」は良い親に恵まれ、その庇護を受け、家族の価値観や時間をたくさん共有してきた子だと思うのです。親がロクデナシで子どもが立派などということはありません。どんな困難も切り抜けるには家庭が築いた力以外の力はないのです。親が子どものことを考え、真剣に接さないと総崩れになりますし、その傾向はもう強まっています。すぐにリーマンショック級の経済崩壊が起こるでしょう。
 これからはさら大きな波が来ますが、「人の世に生まれたら志あるべし」‥・の目標で大人になってもらいたいです。ダメになっていく人のほとんどは志がない。お金などいくらあってもすぐ消えますよ。志は使えば使うほど人間を大きくします。今、学校はこれを教えるのを忘れてしまっているようですね。学校で学べないものは本や優れた人から学ぶよりありません。(新聞・ニュース四月号一部閲覧)



(2019年4月号ニュース・新聞本文一部閲覧)

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