ブッククラブニュース
平成27年1月号(発達年齢ブッククラブ)

鬼は外!福は内!

 温暖化という言葉が嘘のように感じられる寒い冬が続いています。インフルエンザが流行していて、一家でかかってしまったお宅もあるようで、お父さんがお一人で配本を受け取りに来た方も多かったように思います。甲府は盆地ですから放射冷却が強く、乾燥します。ほとんど雪も降らないのでカカア天下とカラっ風(いえ、カカア天下はゆめやだけですが)で、冷え込むこと冷え込むこと・・・これは節分のころがピークとなります。
 私の子どものころは風邪は風邪で、今で言うインフルエンザは「流行性感冒」などと言って、とにかく寝ていれば治るものでした。私は、この年齢まで入院したことがないのですが、最近ではノロウイルス、RSウイルスなど聞きなれないカタカナ病が流行っているらしく、子どもで入院する子も多いようです。おそらくグローバル化で菌も多様なものが入り込んでいるのでしょう。罹(かか)らないようにしたいですが、罹っても早く治る体力はつけたいものです。とにかく「風邪は万病のもと」と言われるくらいで、ひどくなると体全体がやられます。老人は、風邪をひいただけで死んでしまうこともありましたから(今でもそういうことがありますね)その邪気を払うための祭り、行事は続いたと思います。ですから昔の人は、そういうものが村の内に入ってこないように鬼やらいの行事を考え出して邪気を払ったのではないでしょうか。そして春が早く来るように「福」を呼び込もうとしたのだと思います。

心の風邪もひかないように

 風邪のウイルスばかりではありません。世の中には心にも伝染して来る変なものがウヨウヨしています。ウヨウヨしているものは消すことができませんが、抵抗力をつければ体と同じように心もおかしくなると思われます。ネトウヨなんてものもネットではウヨウヨしています。これも始末が悪いですね。ウイルスと同じでこの政権下では増殖を始めています。
 まあ、風邪のウイルスの予防が手洗い、ウガイ、マスクなどを必要とするように心の防御も心のウガイ、マスクなどを怠らないようにしたいですが、やはりストレスへの抵抗力がないと防ぎきれません。心の抵抗力とは、自分自身の考えを持つことです。で、正しいと思ったらゆらがないようにする。ゆらぐとウイルスが入り込みます。世の中をよく見る力。人に考えをゆだねるのではなく、自分の考えで動くようにする。それがきっと心の抵抗力を強くすると思います。
 心の風邪を引いたことはありませんが、「何かに流されていませんか。」「責任を放り投げていませんか。」「するべきことをしていますか。」「卑怯なことをやってませんか。」・・・きっと心の風邪を引くと心のお医者さんがそういう問診をしてくると思います。

人の体も国の体も同じ

 ふつうの交際関係の殺人とか夫婦喧嘩の殺人、よくある社会的事件などは怖いものではないのですが、無理やり、こちらを襲っても来ないウイルスを刺激しなければ世の中全体が病に罹ることもないでしょう。粋がってお金を頼りに物を言って油断すると、「この野郎。向こう側についたな!」とウイルスが攻撃してきます。咳が出る、熱が出る程度ならいいのですが、国内でウイルス攻撃が始まると体の至る所がやられて致命傷にもなりかねません。
 だいいち、どこから入ってくるのかがわかりません。大都会でこれみよがしに繁殖することもある。繁殖すれば急激に症状が変ります。爆発で模すれば。
 空爆のような効きそうな薬を使って外でウイルスを絶滅させるという方法もありますが、その薬が大きな副作用を持って逆に体を壊すことになる可能性もあります。相手がすぐに要は、ウイルスを自然なものとして敵視もせず、症状がひどくならいうちに通過させ、自然に治癒することが大事です。近代医学はウイルスを死滅させることを目的にしているようですが、ウイルスや細菌はすべて消すことはできません。やられない程度にうまく付き合うよりないと思います。

ウイルスを招くようなことをしては

 昔から言うように危険をもたらすものには「鬼は外」、健康や幸福をもたらすものには「福は内」ですが、何も好んで寒い所に行き、ウイルスを呼び込む必要もありません。良いものは引き入れ、悪いものは入れない。そうすれば不幸や悲劇や病気は起こらないはずです。自分は安全地帯にいてケンカをしかけるのは卑怯と言うものですが、権力を持った人にはけっこうそういう人がいるようで、凶悪なウイルス菌を刺激するとやられてしまうこともあります。売る言葉に買い言葉は危ないのです。喧嘩をしたことのある人はわかりますが、お坊ちゃんで育つとなかなかその辺の感覚が身につきません。ま、もっとも家族中が風邪を引いてもお坊ちゃんは、平気なのかもしれませんが・・・。
 でも、家庭でも父親が周囲に見栄を張って言い過ぎれば売られたケンカは買うと言う人が怒鳴り込んでくることもあるでしょう。それでは困った問題が起きてきます。その怒鳴り込んだ人に家族が傷つけられたら、そりゃあ罪は当事者にありますが、ケンカを売った人にもあることは当然です。「過ぎたるは及ばざるがごとし」にならないように、悪質なウイルスには気をつけるよりありません。(ニュース2月号一部閲覧)

PEACE&HI - LITE

 大学生のころタバコを吸っていた。最初はハイライト。就職して余裕ができるとピースを喫った。ピースの味は最高で、他のタバコなど吸えたものではなかった。時には、ピーカンという50本入りのピースを缶を無理して買い、全部煙にした。とにかく香りのいい葉で、味も濃厚。吸ったという感じがした。
 以来、長い間ピースを吸っていたが、ブッククラブ会員の露木耳鼻咽喉科の奥さんに「子どもと女性を相手にする人間がタバコを吸うなんてとんでもない。すぐに止めさせてやる! ウチの禁煙外来に来い!」と脅されて、変な薬をもらった。その薬を飲むとタバコが急にまずくなり、とても吸えたものではない。たった一週間でやめた。でも、ときどきゴハンを食べた後などピースのあの味が懐かしくなる。今でもピースの味はいいものだと思っている。たから、私はタバコを吸う人に文句は言わないし、まして止めろ!とは言わない。タバコは500年もの間、日本に根付いた「文化」でもあるからだ。

表現の自由

 ところで、今月の話は、タバコの味などという悠長で日常的ものではない。最近、問題になっている「表現の自由」だ。いま危機にさらされているのは「力を持つものへの批判」である。批判することが危ないのである。まるで戦前の治安維持法の時代にさかのぼっていくかのようである。フランス雑誌社の風刺画は宗教指導者への揶揄(やゆ=からかうこと。なぶること)で大変なテロ攻撃を受けたが、日本ではサザンオールスターズの桑田さんがやられた。「もらった紫綬褒章をゾンザイに扱った」とか紅白で歌った「ピースとハイライト」という歌の歌詞が「政権批判だ」と言うのである。
 オリンピックで金メダルをもらった女がメダルを噛んだことは「不敬=尊敬の念を持たず、礼儀に外れること」とは言わなかったのに、紫綬褒章をポケットから出すと「不敬(天皇への侮辱)」ということになる。女性週刊誌に至っては「ピースとハイライト」は反日で、「紫綬褒章のポケット出し」は不敬だと強く攻撃し、驚いたことにネットまでそういうレベルの抗議でいっぱいらしい。つまり、皇室に対して礼儀を尽くさない、政権に対してヨイショをしないと叱られるということらしい。どこまで日本人は権力への批判を失ってしまったのだろう。だいたい報道自粛というのがある。天皇が崩御(天皇の死去だけはこういう日本語がある)があると華美なことやにぎやかなことはやめるとか報道しないとか、じつは3・11の津波や地震についてもかなり報道自粛があった。原発事故など報道自粛というより報道統制と言った方が早いかもしれない。

パフォーマンスなど芸能の内だ

 こういう中で、歌謡曲などの歌詞は、かなり比愉的に書かれるので、直接的な問題はない。誰かの誹謗中傷としてもかなりボヤかされているわけで、元来、権力者、有名人などは中傷まではいかなくても揶揄されるくらいのことはあった。それが今回、この騒ぎである。桑田さんは謝ったらしいが、「チョビひげで歌ったというのはヒトラーをイメジさせるもので、安倍首相を侮辱するものだ」という意見が出てきた。そこで謝るということになったが、一応謝っておけば干されないだろうという事務所の思惑だろう。
 それはともかく、私は紅白歌合戦を見ていないので、どういう歌なのか知らなかったから調べた。で、桑田さんの歌詞を分析してみたが、過激なことはまったくない。どこが反日なのかわからない。だいたい、おかしな国になっているなら反日だってかまわないと思うが・・・なんだか政権よりネット住民や女性週刊誌のほうが国家主義的に見えてくる。歌詞を読んでみてください。ちょっと長いけど歌詞の全文です。
♪・・・何気なく観たニュースでお隣の人が怒ってた 今までどんなに話してもそれぞれの主張は変わらない
教科書は現代史をやる前に時間切れ そこが一番知りたいのに何でそうなっちゃうの? 希望の苗を植えていこうよ 地上に愛を育てようよ 未来に平和の花咲くまでは…憂欝・絵空事かな?お伽噺かな?
♪・・・互いの幸せ願うことなど歴史を照らし合わせて 助け合えたらいいじゃない硬い拳を振り上げても心開かない都合のいい大義名分(かいしゃく)で争いを仕掛けて 裸の王様が牛耳る世は…狂気 20世紀で懲りたはずでしょう? くすぶる火種が燃え上がるだけ
♪・・・色んな事情があるけどさ 知ろうよ互いのイイところ。希望の苗を植えていこうよ 地上に愛を育てようよ
この素晴らしい地球に生まれ、悲しい過去も愚かな行為も人は何故に忘れてしまう?愛することをためらわないで。(○cサザンオールスターズ 桑田佳祐)

 かなり鋭く切り込んだ比喩がたくさんあるが、ほぼ現実・事実だろう。現代史に入る前に授業がいい加減になるのは理由があるからだ。現在の政権にとっても戦後50年のレジームにとっても都合の悪いことがいっぱいあり、くわしく知られたら危ない。これはきちんと教えない方がいいと言うことになる。これが反日や不敬だったら、歌はAKB48が歌うような浅薄なものしか認められなくなるだろう。日本人の思考がだんだん拙劣になっていくのが気になる。CGでごまかすテレビコマーシャルやディズニーランドのショーのような嘘で固めたハイライト・シーンは深みもなく味もない。やはり、真実に肉薄するもの・・・そういうニュースや歌や文学が欲しいところである。「ピース」の味を求める自由をもっと広げないと、この国は、いまの子どもが青年になるころには大変な方向に向かってしまうと思うのだが・・・。死ぬまでには隠れて一度、ピースを吸ってみたいと思う。(2月号新聞一部閲覧)



(2015年2月号ニュース・新聞本文一部閲覧)

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