ブロッター

ブログとツイッターを混ぜて、さらに異論、反論、オブジェクションで固めたものです。で、ブロッターというわけです。毎日書く暇も能力もないので、不定期のコメントです。

2011/春 comment
ブロッター1  ブッククラブで15年前から高学年に選書配本している本。しかし、実際に起こってみると「文学は恐ろしいほど未来を予見するものだ」と思う。この、たつみや章・著『夜の神話』。ファンタジーながら、少年と神様を通して、原発の恐ろしさを描いている作品なのだ。ネタバレになるが、事故が起きてしまったからいいだろう。
 主人公マサミチは、学校の帰りに出会ったツクヨミの神にもらったまんじゅうを食べてから、屋敷神のヨネハラさんや昆虫、動物たちと会話ができるようになる。そのころ、マサミチのお父さんが勤める原子力発電所で非常事態が発生!お父さんの同僚でマサミチが好きだったスイッチョさんは、制御不能となった原子炉に入り、被爆して死ぬ。やがて、マサミチは原子力発電に代わる「薪・木炭発電」を自由研究で発表し、クリーンエネルギーのモデルタウンをつくる夢を語るのだが・・・もう起こることを知って書かれたとしか思えないほど精密な描写がある・・・自然のへの畏敬を忘れた成績優秀な役人や電力会社の社員は、こんな本も読んでいないだろう。原子力安全院と東電の驚くべき無責任さと他人事で語る会見口調・・・放射能汚染は学校教育と科学万能信仰が作り上げた結果だといえるかもしれない。
ブロッター2  HAHATAME配本で8年前から選書配本している本。しかし、実際に起こってみると「文学は恐ろしいほど未来を予見するものだ」と思う。おっと、これじゃ、上段の「夜の神話」のコピペになってしまう。しかし、これは初版が1973年で、何と40年前、カッパブックスの新書タイプの上下巻・・・衝撃的な本だった。見事にプレートが滑り込む様子が天気図の模式で説明され、大地震の頻発とともに沈み始める日本の社会状況が描かれる。日本文化を守るために動き出す人々、政策的な動きやわざとデマで混乱を抑えようとする操作・・・自暴自棄のパニック、それはそれは見事に「カタストロフまでの時間」がていねいに語られる。
 でも、衝撃的だったが、読んだ当時は局地的な大地震しかイメージが浮かばず、日本沈没はありそうだがない「話」としてしか捉えられなかった。阪神大震災が起きても、「限定地域の大災害」という感覚だった。まさか青森から千葉まで500kmに渡る断層が裂けてプレートが滑り込むとは!!! この調子で行けば、東海大地震で糸魚川―静岡線が割れ、日本列島が折れ曲がって沈むことは荒唐無稽なSFではなくなる。まことに作家の先見の明には脱帽である。
ブロッター3  私は毎年、年頭のブッククラブの新聞にその年の予測を書くが、今年参考にしたのが邦光史郎の「干支から見た日本史」だった。そして彼の分析を引用してこう書いた。(2011年一部閲覧 新聞一月号 参照)
 ウサギ年は「飛躍」とか「跳躍」の年だと言われるが、そんなものはウサギから連想した思い違いにすぎない。干支では「卯」の字は「門を押し開く」という字形で、行き着くところまで来た状態が門を押し開いて「矛盾や闘争や犠牲を噴出する意味を持つ」と述べた。変わるべき状態をそのままにしておくと、こうしたことが起こる確率が高くなるとも・・・・。「辛」の字は噴き出すエネルギーや力を表しているから、飛び出たらさらに危険がます。怖いのはこの字が「殺傷」を含んでいるということ。大きな犠牲を伴う殺傷が起きなければいいが・・・・。しかし、実際にはまったく、こうした危険が配慮されずに、このまま行くだろう。私の読みが浅いせいで、こんな抽象的な解説になったが、起きてみればまさに「行き着くところまで来た状態が門を押し開いて」出た地震で、噴き出すエネルギーや力が飛び出たらさらに危険な原子炉の状態で殺傷も起きる。まさに本は予見する力を持ち凄い。
   

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