ブッククラブニュース
平成26年7月号(発達年齢ブッククラブ)

NHK「ちいさな絵本屋と4つの家族」

 数年前にNHKの柿本ディレクターが「絵本と子どもや家族、絵本屋のつながりで番組をつくってみたい」と話を持ち込んできた。企画について尋ねると「30分番組になる」という。長い! それは長すぎる・・・こんな小さな店で30分番組は無理だ、と思った。ところが、柿本ディレクターは「この放映は、甲府放送局エリアだけでなく、BS3で全国にも流れる」と言う。
 「坪面積6坪・・・こんな世界一小さい本屋が日本中に放送されたところで、あまり社会的な意味はないと思う」と、言ったが、柿本さんの粘りはすごかった。そりゃそうだ、彼のお父上もNHKのディレクターで、有名な「シルクロード」シリーズを作った方だという。つまり親子鷹だから「これはもうつくると思ったらつくる」のだろう。そこで、こんな小さな本屋の様子と私の話などではなく、ブッククラブ会員の家庭と子どもたちの様子を生後10ケ月から中学生まで追うということになった。その家族は埼玉の鈴木さん(中学生と小学生の3姉弟)、東京の田中さん(小学生の兄弟)、甲府の2歳と生後10ケ月の子の二家族・・・・それぞれの家庭にカメラが入り、親と子の生活と本の関係を描き出したというわけだ。

威力

 県外の会員の様子は、撮影クルーが直接出向いて撮影する。来店客の家ではクルーが夜も張り付いて撮影するから、30分の番組でもかなりの労力である。配達会員には私がバイクで配達して個別訪問する様子まで(写真)撮影だ。音声、カメラ、ディレクター、アシスタント・・・がいるから、緊張しまくり。笑顔も何となく固くなる。これでは、撮影クルーが入った会員のご家庭は大変だったことだろう。なんとも申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
 さて、問題は放映後である。電話がひっきりなしにかかってくる。FAXもけっこう来る。そして、「配本を取りたい!」という問い合わせ。ネット通販の会社なら、オペレーターを増やして、「はいはい!」と対応できるだろうが零細の店ではとても、そんなことができない。ブッククラブの入会原則の説明をしなくてはならず、お断りするのに相手の住所を聞いて、お詫びとブッククラブの原則を書いたものを送らねばならなくなった。これも小さな店では大変なことだった。テレビの威力を想定外にしてしまっていたのは、やはり慣れがなかったというわけである。

海外

 ところが、放映一回なら何とか乗り切れたが、なんと総合で2回、BSで2回、ご丁寧に再放送された。夕方や真夜中だったから最初より問い合わせは減ったが、それでも何件も電話がかかってくる。極めつけは、TV・JAPANというNHKの海外向け放送NHK・ワールドなるもので再放送された。そんなの聞いてないよ! 海外向けまで流すなんて・・・。
 ドイツの友人が「見たよ!」台湾の絵本専門店の知人が「見ました!」と電話をかけてくる・・・世界が狭くなったのか、時代が変わったのか・・・友人、知人ならまだしも、アメリカやフランスから「配本を受けたい!」などという問い合わせが来る。外国へ送るというのは、ほとんどが駐在員で実家宛ての便だから国内会員と同じで問題はないが、発送が複雑になって、デリバリーの期間も不定・・・困ったものだが、それでも条件に合致している人にはきちんと対応しなければならない。
 宣伝をしないことで保っていた安定が、こういう取材番組のようなもので崩れることを初めて知った。

本の選び方で勝負する

 そしたら今度、絵本の「専門雑誌MOE」さんから「貴店を紹介したいので、どういう営業の方針かを取材させて」と言ってきた。よくあることで、絵本関係の雑誌が店の紹介というのはあることはあるが、たいていはマイナーな雑誌なので一般の目には触れない。だから、ある程度応じるが、{MOE}はメジャーである。予想外のことが起こるので、こういう取材が一番困る。
 ブッククラブ会員の皆さんは、みんなご承知のように、こんな小さな本屋は、他とは違うやり方でないとやっていけない。甲府市は20万人。子どもの人口は15歳以下が12%。つまり幼児から少年まで入れて子どもを持つ家庭数1万ちょっとで、絵本や児童書を買う家などほんのわずかだから、甲府を相手に商売はできない。いきおい、県外も相手にしなければ、すぐに潰れてしまう。けっきょく、65%くらいの顧客が県外だ。しかも、かなりイレギュラーにやらないと、ネット通販やAmazonなどに押しのけられて終わりだ。この数年はその影響も感じられる。
 だから、潰れないように、発達に応じた選書を軸に据えて、ブッククラブ開始の年齢も生後十か月から二歳までとした。つまりよけいなものの影響が出る三歳、四歳ではもう入会できないということ。もちろん「紹介者がいなければお互いに信用できない」から「狭き門」である。でも、35年、これでやってきているから来ているからイレギュラーなやり方もまんざら悪くはないのだが・・・・。

きめ細かく

 良い絵本を選ぶのはもちろんだが、子どもの成長に合っていなければ、いくら良い本でも意味がない。「ぐりとぐら」は良い本だが、1歳児には無理だろう。「しろくまちゃんのほっとけーき」はとても良い本だが、5歳児には合わない。これを発達に応じて精密に組み合わせるのが「ブッククラブの配本」なのである。当然、会員は、ほぼ全部配本のパターンが違う。同じ生年月日で同性なら同じ配本になるが、そういうことは他の大手のブッククラブではまずない。だいたい四月生まれの1歳の子と三月生まれの1歳の子が同じ本を配本されるのはおかしな話だ。一方は2歳に近い1歳、もう一方は1歳になったばかり・・・。弟や妹ができれば、それに対応した配本もしなければならない。こんなことがネット通販でできるわけがないのだから、ゆめやとしては、店として生き残るために、つまり・・・いわばスキマ産業として、ブッククラブを始めたわけだ。すべての子どもと出会えるわけではないのだから、「狭き門」と「一期一会」でお客様とは対応する。どういうふうに丁寧にお付き合いするかが、「スキマ産業の真骨頂」であるから、心してお客様とはつきあうようにしている。

なんでもありの時代だが

 親は親で専門家ではないから、そうそう成長に合った本は選べない。そこで、しかたがないから図書館が貸すだけ借りて、浴びせかけるように読み聞かせる親もいる。これほど悪いことはないのだが、タダだから気にしないのがそういう親。タダより高いものはないのになぁ・・・と思うが、まあ、世を上げて「子どものことを行政まで考えてくれる」時代だ。知らなければ影響され、その風潮に乗るのは仕方がないことだろう。
 一方、私どもはお金をいただいているのだから、それなりの配本をしなければならない。で、多くは問題なく配本(発達対応)に沿って、読み聞かせを進め、一人読みの読書に入っていくというわけである。成長の途中で車の図鑑や戦隊もの、しようもない玩具を山ほど与えて育てれば・・・、あるいはゲーム漬け、お稽古事漬けにすれば・・・、読み聞かせや読書から遠ざかることもあるが、それは、そういう家庭の自己責任。こちらの責任ではない。
 さて、このようにやり方にこだわっているので、店を取材され、それが読まれれば、当然、上記のNHKの番組の視聴者のような見知らぬ人から問い合わせが来る。「MOE」のばあいは購読者が多いから三歳の子、五歳の子を持った親が問い合わせて来るだろう。小学生からも来るかもしれない。ネット通販の会社なら大喜びだろうが、ゆめやでは断るのが一苦労である。
 しかし、向こうもサルもの・・・ひっかくもの・・・何度も言われれば断れない。しかたがないので、「イレギュラーなやり方だけは書いてくれ」と主張して折れた。8月2日発売。電話が鳴り、FAXが流れてこないように祈るばかりである。なにせ、じいさん、ばあさん二人でやっている店なのだ。多忙はお断りである。(7月号ニュース一部閲覧)

たなぼたのねがい

 毎年、六月の後半にゆめやでは、ご来店のお客様に紙を渡して願いごとを書いてもらう。そして店先の笹竹に吊るして立てておく。親子で書いてもらう短冊だが、これはいろいろおもしろい。
 「水泳がうまくなりますように」「ケーキやさんになりたい」「漢字がたくさん覚えられますように」「背が伸びますように」・・・私は読みながら「子どもたちの願いが彦星や織姫に届く」と思っている。さすがに「口がうまくなりますように」「国会議員になりたい」「金儲けができますように」「おこづかいが増えますように」・・・と、いうような短冊は見かけなかった。こういうきれいな心が願うものはすべて叶うことだろう。願いは、17光年先、25光年先の牽牛や織女には一っ跳びだ。
 たいてい毎年7月7日は雨で、牽牛と織女は会えずじまい。願いごとの多くはかなわないことになっているが、今年は晴れた。天の川の両端にアルタイルとベガが光っているのが見えたから、これは絶対叶う。
 短冊にある願いを書いた子どもたち・・・ユウくんも、この夏50mは泳げるようになるだろう。みゆちゃんはケーキ屋さんになれるだろうね。コーちゃんは、もっともっと漢字を覚えられるだろう。小さなメイちゃんも確実に大きくなる!

夢の多くは

 我が家も子どもたちが小さいころは笹の葉に願いを書いた短冊を吊るしたものだった。毎年立てる店先の七夕飾りは、その延長でもある。くいしんぼうの長女は初めから食べ物への願いばかりだった。「お菓子屋さんになりたい」「たくさんアイスがたべられますように」・・・まったく、それからどのくらいお菓子を食べ、何百本のアイスを食べたことだろうか。こういう願いはたやすく叶う。
 しかし、次女は「100mを1分以内で泳げますように」と書いたが、これはなかなか。それでも小学1年から始めたスイミングを自分の意志で大学まで続けた。しかし、天賦の能力や時の運がなければトップにはなれない。次女の同期に萩原智子さんというすばらしいスイマーがいて、彼女がターンして戻ってくるときに次女や他の子たちはまだ往きを泳いでいた。しかし、子ども時代の願いは、なかなか叶わなくても楽しく物事が続けられれば、これはもう叶ったも同然である。トップに立つ幸せより、不幸にならないことのほうが、はるかに大切なことだと思う。

世の中は

 さて、親たちに書いてもらった短冊。これは時期が時期だけに多くが「憲法が守られますように」「いじめがなくなりますように」「徴兵制になりませんように」「虐待がなくなりますように」「平和な世の中が続きますように」といった世の中の動きを反映した願いがほとんどだった。
 ただ、それを読んでいて、こういうものは、お願いするものなのだろうかと思った。このような願いが17光年先、25光年先に届いても牽牛や織女は困惑するだけだろう。「それは、おまえたちの問題だろう!」と・・・、きっと言うはずだ。人任せで何も効果がないのは何でもそうだが、願いを叶えたかったら、意志表示をしていく必要がある。その努力も・・・。
 50m泳げるようになるには、祈るばかりでは1cmも進まない。ケーキ屋さんになりたかったら、他人が真似できないような技術や経営法を身に付けなければならない。願ってばかりいたのでは願いは叶わないのである。
 「消極的平和主義」で考えれば、このような「願い」もひとつの行動・働きかけだが、相手は「積極的平和主義」である。「世界へ出て行って戦争をしよう」という知性の欠けたやり方だ。「儲かるぞ!」「儲かるぞ!」と煽って戦争という最大の消費に導く。これを「願い」で止めるのは無理な話だ。「儲かる」に弱い欲の深い人が後ろにいて、後押しをしている。たいていは重機械や家電、工業用機器を作って売っている人々で、もっと儲けるには武器を作って売ったり、原子炉を輸出して儲けたりしたいわけだ。当然、うしろから政権を突ついて武器輸出できるようにしたり、原子炉を海外セールスするように仕向けることを願う。まったくすごい話だ。日本は、ここまでアメリカと同じ構造になっているのである。国力を高め、世界一であるためには戦争をし続ける仕組みまで。
 こんなものが、子どもたちの未来にとって幸福をもたらすわけがないではないか。子どもたちの小さな「七夕の願い」は、すべて叶わないことになるというわけだ。そりゃそうだろう。戦争になれば犠牲者が山のように出る。サブカルチャーに漬かった若者は、「国を救うのは、かっこいいから出かけて戦う!」と言って出ていくだろうが、現実はゲームの世界とは大違い。爆弾で手足が吹き飛び、一瞬で命が吹き飛ぶのである。
 「国は自衛隊が守る」と政府が言う。しかし、中国人民解放軍270万、韓国陸海空軍63万、北朝鮮軍120万・・・に対して、自衛隊23万・・・・孫子や諸葛孔明のような戦略家が計画をうまく立てないと1日も持たない戦争となる。そして、いつの時代もどこの国も軍隊が国民を助けるということはほとんどない。

困ったことに・・・

 しかし、何と言っても日本には、そんなことをしようとすれば大きな壁が立ちはだかる。憲法だ。憲法は政権の暴走を抑えるためにあるのだが、これを詭弁や強弁で骨抜きにするヤカラもたまには出てくる。「時代にそぐわない」・・・と主張しながら、我田引水の論を立てる。ほんとうにそぐわなくなっているのか・・・!!?
 しかし、日本国憲法はあのときも、それからも、そして、いまも、時代にそぐわないのだ。戦争だらけの20世紀、それがまだまだ続く21世紀に「交戦権を放棄する」などという憲法は世界の現状にはそぐわない。そんなことは最初から分かっている事である。
 しかし、それで何とかやってきた。「交戦権がないとは好都合だ!攻め滅ぼしてやろう」と入ってきた国はない。「アメリカが後ろにいるから手出しができないのだ」という理屈を言う人もいるが、もう世界は古代や中世とは違う。
 ところが、「解釈を変えよう」というバカが出てきた。「NO」という文章を「YES」という意味に解釈で変える。つまり、これは自分個人の趣味を強引に推し進めようという試みである。これでは「言葉は無視」と言うことだ。言葉を無視するということは「法」も無視するということである・・・。
 しかも、この解釈変更を「一内閣の閣議決定だけでやろう」というのだから文字通り無法な話、暴挙である。

「たなぼた」の願い

 それに、この内閣は憲法違反と指摘された選挙で成立した内閣で、1票の価値をめぐる選挙区再編の司法判断がなされた後で行われたものだ。つまり総理大臣職は突然転げ込んできた違法な結果の職である。「たなばた」ではなく、いわば「たなぼた」で、そんな個人のわがままな夢(集団自衛権など)を彦星や織姫が叶えたら、こりゃあ、日本どころか宇宙までおかしくなる。」
 子どもたちの「たなばた」の願いは叶ってほしいが、「たなぼた」首相の願いが叶ったら、この国は危ない。

マスコミ・コントロール

 テレビはおバカ番組ばかりで、きちんと報道しない。NHKなど国会を取り巻く一万人以上の抗議集会を取り上げさえしなかった。
 知ってますか? NHKの9時のニュース・・・秘密保持法問題の時にトップニュースが島倉千代子の死去のニュース、原発反対のデモが国会を取り囲んでも移籍した野球選手のことやサッカー選手のW杯への意気込みなどをトップに据えてお茶を濁した。・・・驚いたのはAKB48がヘッドライントップ・・・これはもう意識的に秘密保持法から集団的自衛権のことまで解説も説明もしないということである。中身がわからない一般大衆は、秘密保持法も集団的自衛権も何だかわからない。この典型はTPPだ。じつは国民は何もわからない。
 身勝手な政策を進めるには、国民から目をそらせばいいわけで、マスコミのコントロールは必要不可欠である。NHKは、この一年でかなりひどくなった。そりゃそうだ。首相の後押しをする人がNHK会長になり、委員には戦争賛美の作家や男女差別主義者の教授が並ぶ。また、マスコミは戦争への扇動をするのか!と思わせるほどだ。
 しかし、集団的自衛権でも、まだ新聞のほうは健在で、多くの反対意思表示が述べられている。つまり、知性ある人はみんな反対なのである。そりゃあそうだ。相手の願いは「反知性の願い」だからである。日本を戦争のできる国にしようとする人々は、ひたすら儲けたい金の亡者と何も考えないヤンキー人間、そして怖いものは見たくないと押し黙る多くの国民だと思う。

子どものことを考えないのだろうか

 しかし、子どもがいれば、親は未来を不安なものにはしたくない。子どもが苦しむような時代にはしたくない。赤ん坊から老人まで含めて国債の均等割りをすると1000万円に届く借金総額・・・言っておくが、これだけ世界的に金融緩和をすれば、ダブついた金はくだらぬものに投資され、バブルを招く。バブルが破裂すれば(これはわかっているはずなのだが)大変なことになる。いま世界の投資家は破産寸前国家の国債を買い漁っているのだ。利幅が大きいからである。危ない状態である。バブルが起き、パンクしたときに何で生産するかといえば、戦争だろう。勝っても負けても誰も責任を取らなくていいのだから。
 それにしても日本を戦争にできる国にしようとしている人々は、自分の子どもが死ぬことは考えないのだろうか。そういう人の子どもは戦争に行かなくていい特権があるのだろうか。 いじめ問題ひとつとっても、ふつうの親は自分の子どもをいじめる側の子にもいじめられる側の子にもしたくないだろう。それと同じで、自分の子が戦争に行って他国の人を殺したり、自分の子どもが殺されたりしたくないだろう。
 暴動も略奪もしないおとなしい国民であることはわかるが、自分で捨てたゴミを拾っている姿を世界から賞賛されるというのもおかしな話だ。ゴミはまず捨てないことである。政治的ゴミは出てしまったら、これは拾わねばならない。世界はゴミを平気で捨て、暴動や略奪をするのが一般的であるが、もし世界から賞賛されたければ、平気で憲法をないがしろにするゴミを拾ったほうがいいと思う。
 そのためにも、いま大人は、きちんと意思表示や反対の努力をする必要がある。そうしない大人は、虐待も平気な親か、バカか、儲ける欲につられているかいずれかである。そんな大人ばかりでは子どもの未来はなくなってしまう。(7月号新聞一部閲覧)



(2014年7月号ニュース・新聞本文一部閲覧)

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